個人再生手続には、①小規模個人再生手続と②給与所得者等個人再生手続の2パターンがあります。
どちらの手続にするかについては、手続の違いを前提として、個別的な事情により判断することになります。
目次(もくじ)
小規模個人再生手続と給与所得者等個人再生手続の共通の点
借金総額が5000万円以下であること
住宅ローンを除き借金総額が5000万円以下の方のみ個人再生手続を利用することができます。
継続的または反復した収入を得る見込みがあること
例えば毎月給料を得ている場合など安定的に収入を得る見込みがある方でなければ、個人再生手続を利用することはできません。
最低弁済額が定められていること
個人再生手続では、借金の額が減額されますが、最低限返済すべき借金の金額が決まっています。
例えば、借金が100万円以上500万円未満の方の最低弁済額は100万円、600万円から1000万円の方の最低弁済額は借金額の1/5の金額となります。
清算価値保障の原則に反してはいけないこと
自己破産手続においては、概ね99万円以下の財産については手元に残しておくこができますが、99万円を超えると財産を処分し、債権者に金銭を分配しなければなりません。
他方、個人再生手続の場合は、99万円を超える財産があったとしても、財産を処分し、債権者に分配することは求められません。
ただし、99万円を超える財産をお持ちの場合は、その財産総額と最低弁済額を比べて、より高額の方を今後返済すべき借金の総額とすることになります。
清算価値保障の原則とは、自己破産手続と個人再生手続の均衡を保つ制度なのです。
小規模個人再生手続と給与所得者等個人再生手続の違い
債権者の意見
小規模個人再生手続では、総借金額の過半数を有する債権者が反対意見を述べる場合、裁判所は小規模個人再生手続を認めることはできません。
他方、給与所得者等個人再生手続では、債権者の反対意見があっても、裁判所は、給与所得者等個人再生手続を認めることができます。
したがって、債権者からの反対意見が予想される場合は、給与所得者等再生手続を選択することになります。
自営業者の場合
小規模個人再生手続は、安定的な収入を得ている限り、自営業者でも利用できますが、給与所得者等個人再生手続は、自営業者では利用できません。
なお、通常のサラリーマンの場合は、小規模個人再生手続と給与所得者等個人再生手続の両方の手続が利用できます。
安定的な収入の変動の幅が20%以内であること
小規模個人再生手続では、安定的な収入を得ていれば、裁判所は小規模個人再生手続を認めることができますが、給与所得者等個人再生の場合、安定的な収入の変動の幅が20%を超えていると、裁判所は、給与所得者等個人再生手続を認めることができません。
例えば、年度によって、歩合手当の金額に大きな変動がある場合です。
したがって、安定的な給与の変動の額が20%を超えている場合は、小規模個人再生手続を選択することになります。
可処分所得金額の2年分と最低弁済基準額といずれか多い額
小規模個人再生手続の場合は、最低弁済額と清算価値を比べ高額の方を総返済額として、返済していくことになりますが、給与所得者等再生手続の場合は、最低弁済額と清算価値とを比べるだけでなく、可処分所得の2年分とも比べ、より高額の方を総返済額とします。
可処分所得とは、収入額―(税金+社会保険料+生活維持費)のことをいい、生活維持費は、家族構成によって、変化します。
したがって、場合によっては、給与所得者等再生手続の方が、高額の返済を認めらえることがあります。
ただし、収入額や家族構成によっては、小規模個人再生手続と給与所得者等個人再生で、返済額に変わりがないこともあります。
最後に
債権者への異議が出される可能性があるか否か等で、判断するが、サラリーマンであろうと自営業者であろうと、原則として、返済金額の少ない小規模個人再生を選択することが多い。